「アスレティックトレーナーという仕事③」                    ~高校ATの魅力~

October 2, 2016

 

 

「アスレティックトレーナーという仕事」第3話目

 

 今回は高校アスレティックトレーナー(AT)の仕事の魅力について、私が普段感じていることについて書こうと思います。

 

 はじめに、高校スポーツを実践する多くの生徒達(以後競技者とします)は、その競技において「勝つ」ことを大きな目的としています。(中には、心身の強化や、ただスポーツを楽しむ目的の競技者もいると思いますが、ここでは「競技で勝つ」を目的としている競技者についての話です。)それは指導者も同じで、負けるために部活動で必死に練習しているわけではありません。

 

 この仕事について、どうすれば強くなるか、勝てるか等と相談を受けることが多々ありますが、その多くは、主に競技力に直結する体力や競技動作の向上のような“ポジティブ”な面のコンディショニングの向上を目的としたものが中心です。ですが、単純に、練習の量を増やし、トレーニングの質を高めれば、それに伴って競技者の身体の疲労は蓄積しやすくなり、練習中の傷害発生の危険性も増します。また、競技レベルが上がるにつれて、試合数や遠征も増え、相手のレベルも高くなるにつれて、それに対応するための身体への負担は当然高くなります。そうなってくると、競技環境はますます厳しくなり、疾病やスポーツ外傷・障害のようなスポーツ医学的な問題によるコンディショニングの低下、すなわち“ネガティブ”な面による影響が増えてきます。すると、ポジティブな面のコンディショニングを積極的に行うことが困難となり、高めた競技能力を実際の競技の場面で思うように発揮できない事が生じてくるため、いかに競技者のネガティブな面のコンディショニングを管理していくかが、競技力向上を目的とした競技者の強化には重要な鍵になるのです。より疲労しにくい身体づくりをし、傷害をいかに早く回復させるか、目標とする試合に向けていかに良好なコンディションにするかを競うことが求められてきています。

 

 そういった背景から、競技者の競技能力を高めるためのポジティブな面のコンディショニングに併せて、特に競技者の外傷・障害・疾病・疲労などのような、競技成績に対するネガティブな影響をできる限り少なくするためのコンディショニングを実施する専門家として、アスレティックトレーナーへの必要性が高まってきているように感じます。

 

 日本ではプロスポーツ、実業団、大学スポーツなど、競技力が上がるにつれてアスレティックトレーナーの普及が広まっていますが、その前段階である「高校」にはまだまだ普及が行き届いていません。そのような中、私が活動する川平ATルームでは、高校生を対象としたアスレティックトレーナー活動ができるということで非常に光栄に感じています。

 実際に仕事をしていて、スポーツ界では当然というような事を、高校スポーツ現場ではまだ当たり前になっていなかったり、誤った情報によるコンディショニング管理を実践している競技者も多々見られるため、コンディショニングの基礎教育として高校生からしっかりと正しい方法を身につけさせることは非常に大切です。

 

 高校生はまだ身体が発達途上段階であり、十分なトレーニングと休養、栄養、セルフケア(アイシングやストレッチングなど)を正しく実践することで、身体、そして競技力の成長が十分に見込めます。しかし、誤ったコンディショニング管理や、トレーニングのしすぎ、ケガからの復帰に向けた十分なアスレティックリハビリテーションの未実施などで、競技力の低下、ケガのリスク増大、さらには競技者の将来性までもつぶしてしまう可能性があります。私達、高校ATが存在することによって、それらを払拭し高校生の健全たる発育発達と競技力を支え、更には対象高校生たちの未来もサポートしています。

 

 私はふと思うことがあります。私自身、高校生の頃ケガに悩まされ、ATが身近に存在せず、望むような結果が出せぬまま高校3年間のスポーツを終えましたが、今の私が当時の私にケガからの正しい対処法などをきちんと指導される環境であったなら、違った3年間であったと思います。そう思うと、日々関わる競技者たちの可能性を広げる手助けができているように思えて、やりがいを感じます。特に、長期運動離脱が必要なケガをしてしまった競技者においては、どのようなアスレティックリハビリテーションが実施されてきたかが復帰までの期間、復帰後の活躍、再発のリスク回避、将来に残る後遺症などに影響を与えるため、ATとしての力を試される部分です。

 

 全てのスポーツ傷害を防ぐことは困難ではありますが、スポーツ傷害の中には、防げたはずのケガというものが多数あるため、それを防ぐことが重要です。特に、高校生というまだ身体の発達が成熟しきれていない競技者には様々なコンディショニング不良になる原因がたくさん発生します。その原因を一つ一つ改善させていくことで、防げたはずのケガを予防でき、練習に集中でき、競技力の向上に繋がると信じています。

 

 普段の指導の中で、以前できていなかった良くない習慣を変え、良い習慣が身についていく姿や、その結果、競技力やその競技者の態度や姿勢が良い方向に改善していく成長を見届けられることは私にとって大きなやりがいの一つです。関わる競技者が、望まれる方向に変化、成長していく姿というのはATとして非常に嬉しいことです。私の持つ日体協AT資格は公認スポーツ指導者資格としての位置づけであるため、競技者の「教育」という点も欠かせない仕事の一つです。(これに対し、米国におけるAT(NATA-ATC)資格は米国内では準医療従事資格として認定されています。)

 

 私たちが活動する高校AT活動は、国内ではまだまだ発展途上です。日本でもAT、特に「高校AT」が当たり前になる時代が来ることを切に願います。

 

 ちなみに、米国では70%もの公立高校がATを導入しており、1000人以上の生徒がいる公立高校では89%もの普及率があります。(Pryor 2015調査より)なかでも米国ハワイ州では、各公立高校にそれぞれ2名のATが常駐しなくてはならないという条例が定められるほど、ATの重要度が高く認知されています。日本国内でも、同じように、高校ATの普及が広がることで、未来あるたくさんの高校生たちが安全にスポーツへ専念できるのではないかと思います。そのような日を迎えられるよう、私達は「高校AT」普及へ向けて活動していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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