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  • 白坂 広子

怪我と向き合うこと

4月下旬、ある長距離選手が自己ベストを更新しました。3年生になり、メキメキと力を付け始め、高校総体目前に自信を持って狙って出した自己ベスト記録でした。5月下旬の高校総体ではインターハイ出場を目標に、ここから更に磨きをかけていくはずでした。しかしこのレース後足から足に痛みが出始めました。ウォーミングアップで激痛がはしるほどで、練習はしばらく中断せざるをえませんでした。私に相談に来たとき、私はすぐに疲労骨折を疑いました。そして整形外科を受診し疲労骨折と診断され、医者からは1ヶ月間走ることを禁じられてしまいました。

先生も私も悩みましたが、やはりインターハイ出場という目標へ突っ走ることに決めました。そしてこの日からこの怪我とともにどうやってインターハイを目指すか、というプランニングを始めました。心肺トレーニング、筋肉トレーニング、コンディショニング、食事、薬、どのタイミングで走るトレーニングをいれていくかなど、先生、私、選手と1ヶ月間ずっと話し合いを重ねました。走ることを禁じた医者も協力的に治療をしてくれました。

どちらかというと控えめで気持ちを表に出さない性格のこの選手。しかし当日は別人のように気持ちを全面に出していました。2種目に出場するため、大会期間中の3日間は2種目ぶんの予選、準決勝、決勝と弾丸スケジュールでした。「あとは今持っている力を出し切るだけ」、そう伝えて送り出しました。そして集中した、少し緊張した面持ちでレースに向かいました。

結果は負け。2種目ともにインターハイへの夢は叶いませんでした。悔しさが爆発しましたが、結果を受け止めるしかありませんでした。怪我をしても目標をぶらさず、走る練習ができないぶん一生懸命トレーニングをやってきて、こんな逆境のなかでも頑張れば夢は叶う、と思い続けていました。しかし、インターハイという高いレベルに登りつめるにはやはりしっかり走りこむ練習が必要だったのです。十分に走る練習ができなかったことが一番の敗因です。しっかり練習を積んだ人がインターハイに行けるのです。

調子が上がってきて、練習がどんどんうまくいく、自己ベストをたたき出し、「さあ、ここから!」というタイミングでの怪我。実はこういうタイミングで怪我することはめずらしくありません。長距離選手だけではありません、どのスポーツにも共通しています。調子がいい!と言っていた直後に肉離れをしてしまった短距離選手、この調子なら敵なんかいないと何人もドリブルで抜いてきたのにアキレス腱を断裂してしまったバスケットボール選手やサッカー選手をみてきたことがあります。つい練習時間が長くなってしまうことでクールダウンやストレッチの時間、睡眠の時間が少なくなってしまい、怪我をしてしまいやすくなるのです。練習がうまくいっている、調子がいい、と感じているときは体はそれだけ疲労しています。そういうときこそ体のケアの時間、栄養、睡眠を十分に行うことが大切です。

怪我をしたら練習の仕方や生活面を振り返ってください。そしてもう怪我を繰り返さないためにどのようにしたらいいのか考えはじめてください。それが「怪我と向き合う」ということです。

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