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  • 白坂 広子

長期離脱から競技復帰まで ~チームの一員としてできること~

みなさんは部活動で怪我をしてしまい長い間休まなければならなくなった場合、どのように「チームとの関わり」を維持していますか?

私は今までたくさんの怪我人をみてきていますが、ほとんどの怪我人は競技復帰を目指しリハビリやトレーニングを一生懸命やります。自分の体と向き合い怪我を治すための努力をし、また怪我をしないように体の改善や筋力トレーニングなどを頑張っています。怪我が治るのに時間がかかればかかるほど悩みとして出てきてしまうのが「技術的な遅れ」「本当に復帰できるのか、疑い」「チームからの疎外感」「練習参加への不安」ですが、ほとんどの長期リハビリ経験者は自分と向き合うことに時間を費やし、周りからのサポートを受けながら、無事に復帰をしていきます。

今日はある女子生徒の話をしたいと思います。

この生徒は今年3月に膝の手術をしました。現在術後6ヶ月で少しのチーム練習とリハビリを頑張っていて12月ごろに競技復帰を予定しますが、今頑張っていることは何よりもチーム主務としての役割を頑張っています。

彼女は自分のリハビリやトレーニングの前にチームの仕事をします。練習準備をしたり、テーピングを巻いてあげたり、ボール拾いをしたり、ボールサーバーをしてあげたり、監督のためにラビット(雑用係)となったり。テーピングは私と一緒に足首や膝の巻き方の練習をしています。とにかくチームのためにできることを自分から探し出します。試合の日は主務として監督をサポートし、アップ準備をしたり、ウォーターガールになったり、トレーナーになったりと大忙しです。そのため自分のリハビリやトレーニングの時間はチーム練習が終わってからになります。そのときにはもうすでに疲れていたり、時間や心に余裕がなかったりもしてリハビリができない日もありますが、ほぼ毎日練習終了後にはリハビリトレーニングを求めて私のところにやって来ます。

一時期はチームサポートが忙しすぎてリハビリトレーニングがうまくできず、病院の定期検査で行った筋力測定で「この時期にあるべき筋力に届いていない、まだ弱い」と言われてしまったことがあります。その時に私は彼女に言いました、「もっとリハビリの時間を増やさなくちゃ。筋力が戻らないと復帰が遅れちゃうよ」と。その時の彼女の答えに私はちょっと感動しました。

「みんなとサッカーをしている時間を大切にしたいから、自分はリハビリは時間があるときにやると決めています。でももっと時間をつくるようにします」

この言葉の中には「みんながサッカーをする時間を見届けたい、見守りたい、きっとこのチームにまた戻ってきたい、チームから離れたくない」という気持ちが入っているのです。チームを心から好きである、真のチームプレーヤーだなぁ、と感動してしまいました。自分の怪我が治り、体も改善されて万端の状態復帰をしたとしても、チームに馴染めなかったり、技術的な遅れを理解してもらえなかったり、疎外感が残ったり・・・ということがあります。そうなってしまったら復帰をしたあとにとても辛い思いをすることにるのです。彼女はそれを感覚的にわかっていて、自分とチームの関わりを大切にし、プレーができなくてもチームの一員として行動し続けているのです。

リハビリトレーニングや競技復帰よりも大切なこと、それはチームあってこその自分であることを理解し、チームの一員としての自分でい続けることです。

今チームは選手権大会での負けを乗り越え、新人戦に向けて再出発しています。彼女もまた大忙しの日々を送っていますが、彼女が大好きなチームに一番良い形で復帰できるよう、私も彼女とのリハビリの時間を大切にしていこうと思っています。

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