年齢で指導を考える

November 29, 2018

スポーツ現場において、『傷害(ケガ)予防』と『パフォーマンス向上』はどちらも重要な課題です。

 

このうち、私の活動現場(高校スポーツ)においていうと、選手も指導者もどちらかというと『パフォーマンス向上』へのモチベーションは非常に高く、『傷害予防』への意識はなかなか持ちにくいようです。

 

というのも、「予防」と言われても、怪我をしたことがなかった、あるいは軽い怪我しかしなかった人からすれば、今まで特に気にせずにプレーできていたという経験から予防意識にまで繋がらないのかもしれません。

 

逆に、大きな怪我や、繰り返しの怪我を経験する選手達は、同じような思いをしたくないからこそ、予防への意識や取り組みが深まっていくという傾向にあります。

 

これは指導者の方々にも同様にあり、チーム内で決まってこの怪我が多い、または大事な試合前にいつも怪我がある、などの経験が増えていくと、なぜ怪我が生じるのか、防ぐことはできないか、という意識に変化していきます。

 

川平ATR開設当初は、ケガが発生したら、「大事な大会があるから速く復帰させてくれないか」という声が圧倒的で、『なぜ』このケガに繋がったのかという考えに至らず、ケガの後の相談が圧倒的でした。高校スポーツ現場のケガは、仕方なかったケガ(事故)よりも、後々考えれば防げたケガが多いと私は考えています。

 

運動(練習、トレーニング、ゲーム)内容、強度、量、コンディション(肉体的、精神的)、体力レベル(筋力・持久力・柔軟性・バランス)、競技理解度、運動能力、危険察知能力、空間把握能力、気候、路面状況、シューズ、ルールの有無、既往歴、関節弛緩性・・・などなど、あげだしたらいくらでも傷害要因は出てきます。

全てを解決することは困難かもしれませんが、私達ATという専門家の価値として、それら多数の中から対象者(選手・チーム)にとって重要な課題(改善点)の抽出と改善案の提案が可能です。

 

ATは、ケガの後にテーピングや競技復帰へ向けたリハビリ指導することだけが役割ではありません。

むしろ、テーピングにせよリハビリにせよ、体の構造や仕組み、ケガの発生要因を理解しなければ行えませんので、理解しているからこそ、「予防」指導が可能になります。

 

現在、まだ完全ではないものの、ケガの発生前にどうしたら予防につながるかという相談が指導者や選手から受けることが増えてきています。こういった変化は我々としては望ましい傾向と言えます。

 

選手や指導者が強く願う「パフォーマンス向上」のためには、怪我をせずに練習やトレーニングに励むことが何よりの近道です。ケガによって競技練習ができなければ競技力向上はありえないのです。競技練習時間が減ることは、マイナスの側面が大きいです。

疲労回復のために練習をしないのと、怪我のために練習ができないのでは意味が全く違います。

 

やはり、ケガをしないのが1番なのだと思います。

ここで、ケガをしない為のカラダづくりや、動きづくりということが重要となりますが、今回は別な視点から傷害予防を考えたいと思います。

 

運動指導現場において、選手の数が多いチームほど、場所と指導時間や効率性を考え、個人指導より全体に対する指導の頻度が多くなるかと思います。全体練習では、他の選手との競争や、協力ができ、連帯感を高めるなど、プラスの側面がたくさんあります。

 

ここで、注意したいことは、全体で練習する際、各個人個人の体力や能力に合わせた運動内容・強度・量であるかということです。

 

高校1年・2年・3年となると、1年生と3年生が同じ体力レベルであるとは到底言えません。時には早熟な1年生選手が3年生と渡り合えるほどの体力があることもありますが、大抵はそうではありません。

 

運動経験年数が違うだけでなく、単に発達途上の年代であるため、筋力や持久力面において差があるのが当然なのです。中学生から高校生では、骨、筋肉、腱、靭帯、内蔵器官など完全に発達仕切っておらず、この発達段階は各個人によって成長スピードが異なります。特にこの時期の女子では女性ホルモンの出現が見られ、男子とは異なったコンディションの変化を感じやすくなる時期です。

 

昨今、LGBTという事への関心が高まってきており、指導者側にもLGBTの理解を深める働きかけが増えてきています。性別にとらわれずに一人のヒトとして考えていくということ自体には基本的に私は賛成ですが、スポーツ現場においていうと、身体だけで考えた際に指導をする側は、男子と女子では身体の発達や機能が異なることを忘れてはいけません。

 

特に疲労骨折は、一般に男性より女性に多い傾向にあります。

これは、女性には月経があり、月経をコントロールしている女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が骨の強度を高めるのですが、初経がこない、月経はくるが定期的にこない、最近月経が止まっている、などが見られる場合には、女性ホルモンの分泌異常が考えられ、結果として骨が弱くなり疲労骨折となりやすくなるのです。中学から高校の女子選手では、このことを踏まえていなければ、能力があるのに疲労骨折で思うように競技ができないことに繋がりかねません。

 

実際、川平ATRに相談にくる疲労骨折の多くは女子選手です。

そしてその多くは1年生である傾向にあります。

 

他の傷害傾向を見ても、1年生(新入生)の傷害発生は多く、これは学校スポーツ現場では良く言われていることでもあります。予想される要因として、部活動内容に見合った体力レベルにない中、練習に取り組んでいることがあげられます。

体力レベルが、そのチームの運動内容に見合ったものであるかどうか、メディカルチェックや体力テストを行い、各選手の特性を理解しておくことは重要です。

 

また、専門的な評価方法がわからない場合でも、誕生月を確認して早生まれか遅生まれか知っておくことも、良い判断材料ともなります。

同じ学年であっても、4月生まれと3月生まれでは、約1年の差があります。この差は非常に大きいです。1年の差があるのに、同学年の扱いをされてしまうのは、早生まれの選手には酷な話にも思えます。

 

例をあげると、私には現在2歳の娘(遅生まれ)がいますが、同じ年に生まれた知人の子は早生まれのため、学年がうちの娘より一つ上になります。私の娘はその子より、小学校、中学校、高校入学前に、長い成長できる期間を経て学校へ入ることができるのです。表現が良いとは言えないかもしれませんが、遅生まれの私の娘は、その子に比べて身体の成長という意味においては得をしているのかもしれません。(すべて得ではないと思いますが。。。)

同じ2歳でも、2歳1ヶ月と2歳11ヶ月の子ではできることの差があることは容易に想像できるかと思います。

 

幼児ほどとまではいかないまでも、高校生、特に1年生は身体の発達途中段階と言えます。

 

学年毎に分けて運動を行うだけでなく、学年の中でも誕生月への配慮も指導の際には注意しておきたいことだと思います。

 

恥ずかしながら、こんな大事な基本的なことに、つい最近読んだ本から気づかされました。

まだまだ、私自身がATとして発達途中段階であることに、ハッとさせられました。

 

私は高校ATとして、あらゆる知識や現場経験を日々インプットしていますが、専門家として、いかに現場や社会へアウトプットできるかが最も重要になります。

どんな知識や技術も、相手に伝わらなければ無駄以外のなにものでもありません。

 

今後も、あらゆる工夫を凝らして、『高校スポーツの安全を守る』を念頭に、日々努めていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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