“伝え方と影響力” ~高校ATの立場から~

May 31, 2019

どんな伝え方をしたら、相手に伝わるのだろう?

伝えた結果、どんな影響を相手に及ぼすのだろう?

 

こんなことばかり僕はよく考えています。

 

高校スポーツ現場では、

 

指導者と選手、監督とサポートスタッフ、先輩と後輩、親と子、ATと選手、S&Cコーチと選手、ATとS&Cコーチ、上手い人とそうでない人、真面目な人とそうでない人、経験豊富な人と経験の浅い人、などの様々な立場で相互に影響し合っています。

 

また、周囲の方々から、何かを受け取り、何かを感じ、評価し、自分はこうしよう!と自分で判断して行動に移します。

 

人が今とっている行動は、あくまで自分が選んだ判断の結果であることは、全員に共通していることですが、感じ方、受け止め方の違いで、人は個性豊かな異なる行動を取るものです。

 

例えば、

 

心底憧れのスポーツ選手がいたとして、その選手の高校時代の苦労話や、感動エピソードを聞いたとします。

 

すると、その話を聞いて、「よし、自分も同じようにやってみたらあの人みたいになれるかもしれない、やってみよう!」とか、「今悩んでいることは、きっと自分も克服していける!頑張るぞ!」、または「そんなに努力しなければ成功しないならやめておこうかな」や、「結局それができるのはごく一部の人間で、自分には無理だ」など、肯定的でチャレンジ精神に満ちた解釈もあれば、否定的で自分の可能性に蓋を閉める解釈など、受け手によって様々です。

 

高校スポーツ現場において、この受け手にあたるのは選手(学生)なわけですが、受け取り方は様々あるにせよ、その苦労話や感動エピソードをどんな表現でどのように伝えたかで、伝わり方の印象は大きく異なります。

 

話し手(例えば指導者やAT)の話し方が上手でない、話の構成が良くない、惹きつけるような話し方でない、声のトーンが暗かったり怖かったりして話が入ってこない、悪い意味で自分たちと比較されたように聞こえる、あるいは、話し手への信頼が薄くて話しを聞いているようで実は聞いていない、または聞きたくない。

 

このような状況であれば、受け手がどうこうの前に、伝える側に何か落ち度があるのでは、と言えそうです。

 

反対に、話し手がこんな伝え方であったらどうでしょう。

 

話し方が非常に聞き取りやすい、理解しやすい、好感が持てる、なんだか聞いていてワクワクする、自分たちの事を肯定されている感じがする、承認されている感じがする、自分の事のように聞こえてくる、話し手への信頼が厚く、この人の話なら聞いてみよう・信じてみようと思える。

 

こんな話し方や、話し手の状況であれば、受け手の受け止め方は肯定的でしょうか?否定的でしょうか?どちらになりやすいと考えますか?

 

僕は、圧倒的に肯定的に捉えられると考えます。

なぜなら、後者の伝え方で受け手が嫌な気になる方が難しいと考えるからです。

 

スポーツ現場に生じる上下関係として、指導者と選手、先輩と後輩、スタッフ(大人)と選手(学生)などがあり、伝えるというのは上の者から下の者へ伝えるということが一般的かと思います。

というのも、経験豊富な人からの情報の方が経験が少ない人よりも、失敗や成功の経験が圧倒的に多いはずで、良質な情報を持っているからです。

 

ですが、この上からの情報の「中身は良質」なものであっても、伝え方や伝わり方がうまくいかなければ全くもって想定外の結果が生じます。

 

僕はたくさんの失敗をしてきました。

 

アイシングしなければいけない、ストレッチングしなければいけない、トレーニングしなければいけない、そのフォームは良くない、こうした方がケガしにくいからこうしなさい、など上から物を言う伝え方をしていた頃があります。当時の僕は自分のこれまでの勉強の成果をようやく発揮する現場(川平ATR)ができて、やる気に満ち溢れていました。

そのため、スポーツ傷害に関する身体の事として、アイシングやストレッチング、トレーニング、フォームなどについて、絶対的に自信があると過信し、「〇〇しなさい」「〇〇しなければいけない」「それは良くない、だから〇〇しなさい」と自信たっぷりと指摘しまくっていました。自分の言う通りにしていれば間違いないとでも言わんばかりに。

 

そんな指摘マンの私は、言うとおりになかなか行動しない選手や、リアクションの少ない選手に対して、「この子はやる気がないのか?」や、「この子は人の言うことを聞かない子だ」などと、自分に非があるのではなく、相手に非があると考える人間でした。

 

そんな日が続いていくうちに、とうとうその選手はATRに顔を出さなくなります。

 

それからしばらく経ったある日、自分の指示ではなかなか動かなかったその選手が、ストレッチングを入念に実施している姿を発見します。

 

驚いた僕は、その選手に問います。

「ストレッチングをしっかりしてくれているんだね!素晴らしい!・・とろこで、どうしてしっかりと行う気になったの?」

 

確認する時の僕の心境としては正直、自分の伝えていたことがやっと伝わったんだと思っていました。

 

ところが、その選手はこう言いました。

「〇〇先輩がケガしないでずっと練習に出続けているの見て、何でか考えたら、その先輩はいつもストレッチングをしっかり行なっていたんです。だから自分もまねしようと思って」

 

えっっ・・・・・・・・。(僕)

 

僕はそこで、自分の圧倒的勘違いに気づきます。そして、自分の愚かさに恥ずかしくなりました。

 

当時、僕がその選手に伝えたかったことはずっと伝えていました。ですが、その内容は選手には何も届いておらず、何も変化がなかったのに対し、〇〇先輩の行動の方が、影響力が大きかったのです。

僕は言葉にして直接その選手に伝えていました。〇〇先輩は、直接は何も伝えていませんでした。なのにも関わらず、伝えてない方が伝わっていたのです。

 

言葉にしなければ絶対に伝わらないと信じていた僕にとって、この出来事は衝撃的でした。

 

この時に、自分の考え方ががらりと変化するきっかけとなりました。

 

言葉にしなくとも、その場の雰囲気や空気(良い悪いどちらもあり)、姿勢(立ち方だけでなく、振る舞い方なども含めて)、表情(笑顔や怒った顔)、行動力(実際に何を行っているか)といった言葉ではない他の何かで影響力を発揮していることはないだろうかと、よく自分の行動を客観視し、周囲をよく観察するよう意識し始めます。

 

そして、ふと目の前の選手にとって影響力が最もある人は誰かを真剣に考えた時、それは自分ではないなということに気づきます。

 

僕はまだ、選手から心から信頼された人になっていない、この人の言うことなら聞いてみようという気持ちに、まださせていないと。

 

僕が伝えるよりも監督コーチからの方が心に響きそうだ、僕が伝えるよりも慕っている先輩(チームメイト)からの助言の方が聞き入れそうだ、というように。

 

これは専門家としていけないなと本気で感じました。

知識をいくら積んでも、影響力がなければ相手に何も届けられない。

 

選手たちにとって、どうすれば影響力がある人になれるのか考えてみた結果、

 

①自分自身も選手以上に必死に頑張る(特に誰かが見てないところで手を抜かない)

 

②よく選手の訴えを聴く(伝える前に、先ずは聴く)

 

③否定せず相手を承認した上で、新たな提案をして選択肢を広げる

 

この3点が僕なりに行き着いた答えでした。

 

文字にしてみると、当たり前のことだなと思うのですが、普段から常に実施できているかというと、僕は全くと言っていいほどできていませんでした。

 

そのせいか、怒りの感情が高ぶっている時間が多かったようにも思えます。

 

ですが、その事を意識するようになってからは選手たちとのコミュニケーションにおいて、全くといっていいほど困ることがなくなっていきます。

 

選手たちとのコミュニケーションにおけるストレスフリーな状態で、常に楽しく、怒りの感情というのをどこかに忘れてしまったくらいです。笑

 

 

相手を変えようとするのではなく、自分が変わることが大切なのだと思います。

 

 

人生において大切なことを学んだと思っています。

こんな体験ができた高校ATの仕事って、なんて素晴らしい仕事なのだろうと、今置かれている自分の環境に対して、心から感謝の気持ちでいっぱいです。

 

高校ATという仕事は国内でまだまだ普及できていない現状ですが、自分が働いていて非常に価値ある仕事と心から思っており、高校ATが当たり前になる時代が必ず来ると信じています。

というか、僕がそうしようと考えています。笑

 

そんな未来を想像した時に、自分の姿がこれからの高校ATを目指す若者達にとって良き模範となりたいと考えています。

 

今の自分にどんな影響力があるだろう。

どんな伝え方をしたら、相手に伝わるだろう。

このテーマはこれからもっと深めていきたい僕のテーマです。

 

高校生だけでなく、学生のAT教育にも携わる僕は、これらの視点を常に忘れずに、良い影響力を持った高校ATとして今後もこの仕事に励んでいきたいなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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