高校アスレティックトレーナー(AT)は不要か?

October 31, 2019

高校ATは必要?不要?と聞かれたら、私は即「必要」と答えます。

 

自分が高校ATの立場だから当然と言えば当然なのかもしれませんが、

 

なぜ高校ATが必要なのか。

 

 

私なりに考える高校ATの価値というと

 

 

突然の心停止、意識消失、頭部外傷(脳振盪など)、熱中症などの緊急時の救急隊員到着までの初期対応ができるということです。

 

ATとして必要な能力は数多くありますが、先ずこのことが優先順位が高い能力となります。

 

傷病者発生後に、臆することなく誰よりも冷静な判断をし、必要あらばAED(自動体外式除細動器)やCPR(心肺蘇生法)を実施し、緊急時の傷病者の救命率を上げることができます。

 

ここで大切なことはAEDやCPRの処置がいかに早いと良いかということです。

 

総務省消防庁平成29年度版消防白書によると、救急車要請から救急車到着までかかる時間が、3分未満1.3%3分~5分未満7.5%、5分以上10分未満が60.8%、10分以上20分未満が28.5%、20分以上が1.9%というデータがあります。ここからわかるのは大部分が5分以上かかるということです。

 

呼吸停止からの経過時間が1分遅れるごとに約10%ずつ蘇生率がさがるというドリンカーの救命曲線というグラフデータもAEDやCPRを語る上で重要な話もあります。

 

つまり救急車を呼べば安心ということではないのです。救急車到着まで大部分が5分以上かかるのですから、到着まで指をくわえてじっとしているようでは蘇生率がグッと下がってしまいます。

 

加えて、脳のことをいうと、以前にもブログで書きましたが、脳については3~4分以上の血流停止(無酸素状態)にさらされると不可逆性の変化を起こし、回復することが困難となる(公認アスレティックトレーナーテキスト⑧救急処置参照)ため、脳への血流回復のためのCPRをいかに迅速に行うかが重要なのです。

 

AEDの使用やCPRの実施については、法的な制限はなく、誰でも実施して良いことになっています。当然救急法資格を持っていることが望ましいですが、決して資格を持っていないといけないというわけではありません。そう言ってしまうと、誰でもできるならいいのではと思ってしまうかもしれませんが、実際に目の前で誰かが倒れた時、あなたならAED、CPRの必要性判断から協力者要請、準備、使用、実践など迅速にできますか?

 

人が倒れて意識がない、呼吸がないなどの確認はおろか、まず倒れた人に駆け寄ることさえ躊躇するかもしれません。

 

近づいてみたものの、ピクリとも動かない状況に、どうしたらよいかわからずパニックになることもあるかもしれません。

 

誰か先に駆け寄った人がいたので、一先ず自分は大丈夫かとの想いと、野次馬感情で近づいたものの、対応者は慌てふためいており、周囲に自分とその慌てている対応者しかいない場合、冷静に対応しないといけないのに、一緒になって困惑することなく対応ができますか?

 

これらは、救急法資格を持っていない人は当然ながら、救急法資格保有者でさえも起こりうることだと思います。

 

資格を持っていたとしても、普段から意識していないとなかなか簡単に行動に移せるものではありません。一度講習会を受けたから大丈夫でもなければ、何度講習会を受けたとしても、それなりの使命感なくしては、緊急時というのは臆するものです。

 

しかし、その1回目が発生した際に、適切な対応を迅速にできるかがとても重要なのです。

 

ATとは、スポーツ現場の緊急対応について、予防策を講じることから発生時の初期対応やその後の対応まで、迅速に適切に行うものとしての使命ある存在です。

 

緊急時が毎日同じ現場で起こるということはほぼないので、そういった対応回数は少ないものの、ATの本職はそこにあります。勤務中は、緊急時の行動について、確認や訓練を実施しています。

 

それ以外の部分でスポーツ傷害予防としてトレーニング、ウォーミングアップ・クールダウンやコンディショニング指導、テーピング、ストレッチング、アイシングなどを行ったり、講習会などの教育活動を行うことがあります。ですが、優先順位としては、「人の命」「競技者としての命(スポーツを行うための健康な身体)」を脅かすリスクについて常に考えている専門家なのです。言い換えると、リスク管理の専門家とも言えます。

 

たくさんの「人の命」が集まる学校、たくさんの「競技者としての命」が集まる高校(部活動が本格化している)において、どちらの命も守る存在が必要不可欠と思うのです。

 

このブログを読んで下さった方に伺いたいこと・・・

 

 

こんなリスク管理の専門家は不要でしょうか?

 

 

特にスポーツ指導者の方、選手、その保護者、学校管理責任者の方々にとっては、いかがでしょうか?

 

必要と思って下さる方が多いのではと思っています。

 

 

需要はあるはずなのです。

 

 

では、なぜATが普及しないのか?

 

考えられる要素として、

 

①社会的認知不足 ⇒ やはりATの普及がなされていない。ATって何者?何ができる人?

 

②信用できる人材不足 ⇒ ATは国家資格ではないため信頼できる存在なのか受け手が判断できない

 

③雇用するための財源不足 ⇒ ボランティアなら需要はあるが有償となると財源確保できない

 

④リスク意識不足 ⇒ 事故が起きてもなんとかなると思っている?(欧米より訴訟が少ない)

 

⑤普及不足 ⇒ 本気になってATを普及しようとするものがいない

 

大きく以上の5つが考えられます。

 

この中でも⑤の理由に私は無性に腹が立っています。

 

自分がその立場にいながら、結果として世に普及できておらず、何もできていないことに。

 

ATが普及しないのは、全て私の問題なのです。

 

やはり私はATとは非常に価値ある存在で、世に普及すべき存在と心から想っています。

 

にも関わらず、世の中がまだATを認知しきれていないこと、信頼される存在となり得ていないこと、有償という形ででもお願いしたくなる存在になっていないこと、訴訟が起きてからでは遅いということを事故が発生する前に伝えきれていないことなどに対して、必死になりきれていないと気づきました。

 

高校ATは必要です。個人的には部活動が始まる中学校にも必要と考えており、「スクールAT」という発想で必要性を世に普及していくことが私の使命なのだと考えています。

 

その使命達成に向けてできることは何なのか、自分にできることと、できないことは何なのか、どんな短期的目標と、長期的目標であれば非現実性から脱却可能か、考えるだけでなく「行動」を起こし、進んでいこうという決意を固めた今日この頃。

 

現在の仕事は仕事として自分に課されたことを実践しつつも、自身の野望を果たすべく、引き続き「高校スポーツの安全を守る」活動をしていこうと思います。

 

 

 

 

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