top of page
  • 白坂 広子

疲労骨折を防ぐには・・・

ATルームには疲労骨折をした生徒たちが何人かいます。

夏休み前に疲労骨折をし、夏休み期間に部活の練習に参加できなかった生徒、夏休み中に治り競技復帰した生徒、そして夏休みの練習中に疲労骨折をした生徒など様々ですが、共通点があります。

それは、①1年生 ②女子生徒 ③貧血と診断されたことがある ④食事の量が足りていない、という共通点です。

疲労骨折はどのように発症するのでしょうか。

骨は繰り返される運動負荷に対して細胞を壊して新しい細胞に作り変えながら少しずつ負荷を吸収していきますが、疲労骨折は繰り返される運動負荷に対して骨の修復が追いつかない場合に発生します。骨の細胞が壊れて治ってというプロセス中に運動負荷が大きくなったり、十分な休息がなかったり、骨が新しくなるための栄養が足りなかったりすることで骨の代謝が追いつかなくなり疲労骨折となってしまうのです。

ここで上記にあげた共通点をみながら疲労骨折の原因を探っていきましょう。

1年生に発生する疲労骨折の理由はおそらく運動量の増加です。高校レベルの運動量やスピードにまだまだ順応できず、頑張り続けることで春や夏時期に疲労骨折を発症してしまうのです。そして女子が男子よりも疲労骨折のリスクが高い理由には「エネルギー不足」と「月経」が関係しています。エネルギー不足とはつまり食事がしっかりとれていないことです。疲労骨折をしてATルームに相談に来る生徒に必ず聞くことがあります。「きちんと食事を摂っていますか?」「生理は正常に来ていますか?」という質問です。多くの場合「夜は疲れてしまってあまりたくさんは食べれません」とか、「朝は食欲ないので食べません」「朝練に間に合わないので食べません」とか、「お昼は菓子パンで済ませます」「夜はあまり眠れません」などという答えで、食生活の乱れや睡眠不足があることがわかります。このような食生活では十分な栄養素や休息が摂れず、運動に必要なエネルギーが不足してしまいます。エネルギー不足が続くと骨の代謝にも影響を及ぼします。月経がおこるときに分泌されるエストロゲンという女性ホルモンは骨の成長や骨を強くする働きがありますが、エネルギー不足が原因でエストロゲンの分泌が減少してしまうと月経異常が発生し、骨も弱くなってしまうのです。骨の密度は20歳ころに骨量のピークを迎えるといわれており、高校生のときに月経異常により骨が弱くなることは将来的な骨の健康に大きな影響を及ぼしてしまいます。

疲労骨折を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。

やるべきことは「食事をしっかり摂ること」です。米、肉、魚、卵、乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)、緑黄色野菜、海藻類、果物などバランスの良い食事を心がけましょう。もしもどうしても摂取できない場合(ベジタリアンである場合や下痢や腹痛を起こしてしまう場合など)はサプリメントをとることも良いと思います。肉や魚を食べない人はプロテインシェイクや鉄剤などを活用しましょう。乳製品がだめな人はカルシウム剤を摂ると良いでしょう。マルチビタミン・ミネラルなども活用できます。体調が良くない、いまいちパフォーマンスがあがらないと感じている人は血液検査をすることもいいでしょう。もしかしたら栄養不足からくる貧血なのかもしれません。

疲労骨折は脛骨、中足骨、腓骨、大腿骨などに発症します。特徴的な症状は痛みがだんだんと出現してくることです。ウォームアップのときに少し痛みが出て本練習が始まる頃には痛みが治まる、そして練習が終わった頃にまた痛みが出てくる、ということが多いです。そしてその痛みを対処しないでおくと、痛む時間が多くなり、日常生活も痛みが出てくるようになります。運動量が増えていて足やすね、太ももの骨に痛みが出てきたら、いったん運動量を落とすことが大切です。顧問の先生と相談しながら練習量を調整していきましょう。指導者の方々は春や夏の練習は特に1年生や女子チームに関しては練習計画を入念に行うようにして下さい。

疲労骨折をすると骨が再生され競技復帰ができるまでに1ヵ月半から2ヶ月かかってしまいます。最初の1ヶ月は走ることさえできません。骨が治れば当然競技復帰できますが、体力的な遅れを取り戻すのはとても大変なことです。食生活を改善せず無理をすれば疲労骨折を再発させてしまうこともあります。疲労骨折は防げる怪我のひとつです。頑張っている体にしっかりと栄養と睡眠を与えて強い体をつくっていきましょう。

bottom of page